向日点を通るいくつかのアークはまとめて向日アークと呼ばれる(幻日環は除く)。しかしその出現率の低さ、太陽と反対側という分かりにくい位置、形の複雑さからあまり周知されていない。このページではそれらをまとめて紹介したい。
向日アークたちは、基本的にカラム氷晶(ヘースティングスはパリー氷晶)で現れる現象群だが、単純にタンジェントアーク・ラテラルアークが現れたら同時に起きるというわけではない。氷晶に揺れが少しあるだけで容易に不明瞭になる、つまり出現するには揺れの極めて少ないカラム氷晶が広範囲に存在するという条件が必要であり、それが希少な理由なのである。
上の画像は太陽高度30度、カラム氷晶100%、揺れが0.05度~3度までの変化を示したものである。ウェーゲナーと映日アーク、幻日環を見たら分かるように、揺れがたった3度でぼやけてほぼ見えなくなることが分かる。
希少な理由の一つに色の薄さもある。濃い層雲だと雲の色とアークの色がほぼ同じで判別が難しく、青空にうっすらかかる程度の層雲のときでないとまず見つけられない。
観測例
Atmospheric Optics より
向日
別名
英名 anthelion
氷晶 六角柱状
配向 カラム
光路 1→4→2→1,7→4→1→7,8→4→5→6
太陽と同じ高さで真反対に出来る白色の光の集積である。独立して存在する説と沢山の向日アークの通過点になるため明るく見える説がある。
後者の説で考えると、太陽高度40度未満ではディフューズアークと幻日環(とトリッカーアーク)、それ以上ではウェゲナー(ヘースティングス)アークと幻日環の交点である。
観測例
Atmospheric Opticsより
向日光柱
別名
英名 anthelic pillar
氷晶 六角柱状
配向 カラム
光路 1→4→2→1,7→4→1→7,8→4→5→6
向日が縦に伸びる現象。太陽高度約10度まで発生する。ディフューズアークの一部か独立して存在するかは不明。
ウェゲナーアーク
20度、50度
別名
英名 Wegener arc
氷晶 六角柱状
配向 カラム
光路 3→2→7
太陽高度が50度近くまで上がると向日点を交差するNTTのロゴのようなアークで、上下は22度ハロ(上下端接弧)と接する。必ずタンジェントアーク、ラテラルアーク、幻日環が供に現れる。通常は白色のアークだが、最高の状態だと分光し微かに七色に色付く。
へースティングスアーク
別名
英名 Hastings arc,Hastings arc of suncave Parry arc
氷晶 六角柱状
配向 パリー
光路 上部 3→2→7,3→1→5
下部 4→1→6
太陽高度が上がると向日点を交差する、全体像はNTTのロゴのようなアーク。上下は上下SCパリーアークと接する。極めて揺れの少ないパリー配向のときに現れる。
理論上4種のコンポーネント(上部・下部×サンケーブに接する・サンベックスに接する)があるが、ここで紹介している「上部サンケーブに接するヘースティングスアーク」が最も有名である。また、後述の「上部サンベックスに接するヘースティングスアーク」も加え現在2種が観測されている。
サンベックス型パリーアークに接するヘースティングスアーク
別名
英名 Hastings arc of sunvex Parry arc
氷晶 六角柱状
配向 パリー
光路
サンベックス型パリーアークに接するヘースティングスアークは、太陽高度が17度以下の時に出現する。ウェーゲナーアークと形状がほぼ同じで極めて区別が難しいが、純粋なパリー配向(タンジェントアークやラテラルアークが存在しない)時に存在を確認できる。
上の図はパリー氷晶100%、太陽高度0、5、10度のシミュレーションである。
特殊ウェゲナー/ヘースティングスアーク
22度ハロ(タンジェントアーク/パリーアーク)に接した、少し下向きに湾曲したウェゲナー/ヘースティングスアーク。レンズの収差を補正しても通常のものと形状が異なる。
観測例
Halos on the night of 14/15 December 2016 in Rovaniemi, part II 21.9.2017
An occurrence of anomalous Hastings/Wegener 30.10.2016
An occurrence of anomalous Hastings/Wegener 23.10.2016
Wegestings/Hastgener arc
上述の通り、ウェゲナーアークとヘースティングスアークは極めて似ており時に区別が出来ない。どちらの可能性もある、もしくは混在しているアークのことを「Wegestings arc」「Hastgener arc」と呼称することがある…?
トリッカーアーク
別名
英名 Tricker arc
氷晶 六角柱状
配向 カラム
光路 31574,35714,31684,21352,
1237531,1372531
向日点で交差する、全体で8の字を描くダイナミックなアーク。上下は映日アークと接する。実際は8の字に見えることはほとんどなく、X型か、上の部分が繋がっていない鋭い牛の角を彷彿とさせる形となることが多い。
※太陽、映日、対日アークと同じ性質上、トリッカーアークだけを向日アークと名乗って欲しいものです!
観測例
Bright Tricker arcs in Prichovice 29.1.2009
AKM eV より
グリーンラーのディフューズアーク
別名
英名 Greenler's diffuse arc,diffuse B arc?
氷晶 六角柱状
配向 カラム
光路 3157,3175,3257,3275
向日点と対日点を交差するアークで、淡く幅広い末端を持つことからディフューズ(拡散)という名前を付けられている。ディフューズアークは主に2つに分けられる。
①グリーンラーのディフューズアーク(画像橙)
末端部分では内側となる、より淡いもの
②トランクルのディフューズアーク(画像緑)
末端部分では外側となる、よりシャープ
ただし、この2つは下記の特殊な条件を除いて基本的に肉眼では区別出来ない。
グリーンラーアークは太陽高度20数度以下で観測される。
トランクルのディフューズアーク
別名
英名 Tränkle's diffuse arc,diffuse A arc?
氷晶 六角柱状~三角柱状
配向 カラム
光路 315673,325673
向日点と対日点を交差するアークで、淡く幅広い末端を持つことからディフューズ(拡散)という名前を付けられている。
末端部分では外側となる、よりシャープなものをトランクルのディフューズアークと呼ばれるが、基本的にグリーンラーアークと区別は出来ない。
しかし、カラム配向の三角柱氷晶が多ければ多い程グリーンラーアークは薄くなりトランクルアークが支配的になる。上の図は三角柱氷晶100%のシミュレーションである。
トランクルのディフューズアークは太陽高度30度以下で観測される。
観測例
The Halo Vault より
Diamond dust shocks in Hyvinkää, Finland
16.12.2007
First diamond dust in Finland 8.11.2007