エキゾチックハロ

 通常のハロは視半径22°(内暈)・46°(外暈)、一般的なピラミダルハロ18°20°・(22°)23°24°35°・(46°)だが、それ以外の半径のハロが極めて稀に観測されることがある。

 5-6°・12-13°・28°が代表されるそれらはエキゾチックハロ(Exotic halos)とも呼ばれる。長い間見間違いと思われていたが、撮影技術や科学技術の発達によりはっきりとした観測記録が生まれたことで、今では実在する現象と考えられている

 通常の氷晶では作られ得ない度数であり、科学者達は様々な形の氷晶を候補として挙げているが未だ決着はしていない。以下に代表的な説を説明していく。


 上のイラストはエキゾチックハロを作り出す候補氷晶で、特に有力なものが左2つである。それぞれがまさにエキゾチックな形をしているが、左から順に一つ一つ解説していきたい。



 1つ目は、氷Icが作り出す8面体氷晶である。70.5度のプリズム角を持つことから最小偏角は28度となる。

 1981年にE. Whalleyが「28度ハロ(Sheiner's halo)の起源が氷Icの8面体氷晶なのではないか」と言及し、2000年にMarko Riikonenらはこの氷晶の切頂型と特殊な配向+通常のピラミッド型氷晶を組み合わせることで後述のLascar displaysを再現した。

 ※「出現する現象」欄のアークの名前について、左側の[数字とアルファベットの組合せ]は論文内の表記をそのまま用いたものであり、右側の[括弧内の表記]は形状が分かりやすいように独自に名付けたものである。



 2つ目は、2010年にNicolas Lefaudeuxが提唱した傾斜の強い(30-32)のピラミッド面を持つ氷晶である。

 この氷晶は5-6度ハロや12-13度ハロ、28度ハロを再現することができ、通常のピラミッド型氷晶と組み合わせることで後述のLascar displaysを再現した。

 この説の弱点として、このような角度のピラミッド面を持つ氷晶が未発見であることや、Bravaisの法則からこのような面が作られにくいことが挙げられる。

 ※論文では(20-23)としているが、他のいくつかの引用記事では(30-32)としていたり、実際に計算してみた結果ここでは(30-32)として紹介する。



 3つ目は、2つの六角柱氷晶が70度に交差し結合した多結晶氷晶、及びその初期氷晶である。28度ハロを作る氷晶の候補として1987年にAndrew J. Weinheimerらが提唱した

 2つの六角柱氷晶が交差し結合した多結晶氷晶の交差角(鋭角側)の頻度を調べると、交差角70度のところにピークが来た、という研究がある。凍結し始めた段階では氷Icで、8面体(11面と13面かつ11面と22面が70.5度)になりかけたときに氷Ihに相転移し、8面体上に六角柱が成長する、という流れがあるのではないか考えられている。



 4つ目は、Alexander Haussmannが提案したもので「通常のピラミッド面(10-11)傾斜が弱いピラミッド面(10-12)二次ピラミッド面(11-21)」の組合わさった特殊なピラミッド型氷晶である。

 Bravaisの法則を踏まえ、Nicolas Lefaudeuxが提唱した「傾斜の強い(30-32)のピラミッド面を持つ氷晶より形成されやすく、かつ5-6度・12-13度・28度の最小偏角を作り出す面を計算した結果、見つけ出された面の角度の組合せがこれである。

 しかしこちらも同じく、このような形状の氷晶が実際に観測されたことがないという弱点がある。また、このような形の氷晶があるとするならば、他にも様々な度数・形状の現象が作られそうである…



5-6度ハロ


別名 

英名 5-6 degrees halo

氷晶 

配向 ランダム

光路

 

 視半径5-6度のハロ。1998年12月、南極にて観測された。撮影時は通常のピラミダルハロの光景だと思われていたが、コンピュータで写真を確認しているときに9度ハロより内側の小さなハロに気がついたという。ちなみにこのときの写真のいくつかにぼんやりと12度ハロとおぼしきものも写っている。

 通常より傾斜の強いピラミッド面(3,0,-3,2)、傾斜の緩やかなピラミッド面(1,0,-1,2)、二次ピラミッド面(1,1,0,1)を持つ氷晶を設定しシミュレーションされているが詳細は不明。


観測例

South Pole display 11-12.12.1998


12-13度ハロ


別名 

英名 12-13 degrees halo

氷晶 

配向 ランダム

光路 


 視半径12-13度のハロ。通常より傾斜の強いピラミッド面(3,0,-3,2)、傾斜の緩やかなピラミッド面(1,0,-1,2)、二次ピラミッド面(1,1,0,1)を持つ氷晶を設定しシミュレーションされているが詳細は不明。


観測例

South Poll display 11-12.12.1998

halo exotique à 13° - exotic 13° halo 8.6.2014

2012-10-28 Mondhalo, 9°, 18° und 22° 28.10.2012

A re-visited 13° halo observation from 2013, and some thoughts about the responsible crystal faces 17.11.2016


19度プレートアーク


  19度プレートアークは視角19度、太陽の左右に現れるアークである。

 18度プレートアークと非常に似ているが、18度プレートアークは太陽と同じ高度に出現するのに比べ、19度プレートアークは太陽高度より少し下に現れる

 後述のLascar displaysでも観測されている。Marco RiikonenらがシミュレーションしたLascar displaysには上・下部19度アークも見つけられている。


観測例

New case of exotic 19d plate arcs


28度ハロ、プレートアーク


別名 シャイナーのハロ

英名 Scheiner's halo,28-degree halo/upper plate arc/plate arc

氷晶 氷Ic

配向 ランダム

光路 


 視半径28度のハロはシャイナーのハロとも呼ばれる。責任氷晶で最有力なものが氷Icによる八面体氷晶である。他に、通常より傾斜の強いピラミッド面(3,0,-3,2)、傾斜の緩やかなピラミッド面(1,0,-1,2)、二次ピラミッド面(1,1,0,1)を持つ氷晶など、様々な候補があがっている。

 また、28度のプレートアークは23度上・下部プレートアークに似た上・下部と、斜め4方向に現れる上左右・下左右の二種類が観測されている。Marco Riikonenらは特殊な上部もシミュレーションしている。


観測例


Lascar display

※上の画像はNicolas Lefaudeuxの論文でのパラメータでシミュレーションしたものです。


 1997/11/27-28チリのアンデス山脈中央、ラスカー山麓にて、Marko Riikonen、Leena Virta、Daniel Sullivanによって撮られた写真にある多数のエキゾチックハロのこと。11/27の16:20から日没、翌日12/28の日の出から13時まで、という長時間観測された。

 多くの研究者が様々な氷晶モデル(特殊ピラミダル氷晶、8面体氷晶等)で再現しようとしているが、現在に至るまで完全な説明は出来ていない。


 

Nicolas Lefaudeux

下部3度アーク?

上・下部13度アーク

(18度ハロ)

(左右18度プレートアーク)

19度ハロ

左右19度アーク

上・下部19度アーク?

(20度ハロ)

(上・下部20度プレートアーク)

(上・下部23度プレートアーク)

28度ハロ

上部28度アーク?

上左右・下左右28度アーク

上・下部凹パリー型28度アーク


Marko Riikonen



 列挙した現象は不正確であることに注意してください。括弧で囲われた現象は既知のもの、斜体で表記された現象はシミュレーションで観測されたものです。


観測例

The Halo Vaultより
Lascar display 1.12.2008
Lascar display2 2.12.2008
Lascar display3 3.12.2008
Lascar display4 3.12.2008
Lascar display5 4.12.2008