ピラミダルハロ

 ※広義のピラミダルハロピラミダル氷晶が生み出す全ての現象(狭義のピラミダルハロ、ピラミダルプレートカラムパリーローウィッツアークピラミダルヘーリックアーク等)を指しますが、ここでは狭義のピラミダルハロ(ピラミダルサーキュラーハロ)を解説します。



別名 x度ハロ、x度ピラミダル(ピラミッド)ハロ

英名 Odd radius degrees halo,x-degree halo,pyramidal (circular) halo

氷晶 ピラミッド型

配向 ランダム

光路 


 稀に、六角形氷晶の上下に六角錘台(ピラミッド)がくっついた氷晶が大気中に出現することがあり、それはピラミダル(ピラミッド)氷晶と呼ばれる。この形の氷晶によって生まれる様々なハロをピラミダル(ピラミッド)ハロと呼び、22度ハロ、46度ハロに加え6種(9度、18度、20度、23度、24度、35度)のハロが知られている。(それ以外の視角半径のハロはこちらから)

 ちなみに、このような形の氷晶がどういった条件で生まれるのかは未だ不明である


 ピラミダル氷晶の面について考える。ピラミダル氷晶はベーサル面(底面)プリズム面(側面)に加えピラミッド面(プリズム面から28.071度(~31度?)の傾斜)の三種の面を持ち、最大20面体となる。

 そのため通常の六角形氷晶(8面体)と比べると、面々が織り成す角度に60度や90度だけでない多くのバラエティが生まれ、様々な視角半径のハロを作り出す。

 大気と氷の屈折率を考えると、全反射をしない有効な屈折角(及びその角で出来るハロ)は28度(9度ハロ)、52.4度(18度ハロ)、56度(20度ハロ)、62度(23度ハロ)、63.8度(24度ハロ)、80.2度(35度ハロ)である。


 ピラミダル氷晶は必ずしも20面体なのではなく、中にはプリズム面やベーサル面、一方のピラミダル面が欠けていたり、と様々な亜型が存在しうる

(↓プレート配向ではc軸垂直のため、例えば[中,上,上]と[上,上,中]は別物と考えられ順列で計算=16通り、ランダム配向等では同じものと考えられ組み合わせで計算=10通り)


 面が欠けていると、その面を通る光によって作り出されるハロは当然出現しなくなる。そのためピラミダルハロが出た際に何度のハロが欠けているかを調べることで、どのようなピラミダル氷晶の亜型が空に浮いているのかを推察できる。変態度を高めたければ是非取得したいスキルだ。


 通常の22度ハロは、時々左右及び上下が明るくなっていることがある。これは左右に幻日の成分、上下にタンジェントアークの成分が含まれているためである。

 これと同様の現象がピラミダル氷晶でも起きることがある。ピラミダルハロを観測できた際はハロの一部分が明るくなっていないか注目してほしい。

 ピラミダル氷晶による幻日はピラミダルプレートアーク、タンジェントアークはピラミダルカラムアーク、パリーアークはピラミダルパリーアーク、ローウィッツアークはピラミダルローウィッツアークと呼ばれる。


 ※寒い地域に住む生物が持つ不凍タンパクが氷晶をピラミッド型に成長させるという事実が知られています。関係があるのかもしれませんね。


観測例

APODより

Pyramid Ice Crystal Halos Over Finland


Atmospheric optics より

※ピラミダルハロの解説

"Odd Radius" Halos

※夕日のピラミダルハロ

Rare pyramidal halos


9度ハロ


 Van Buijsen's haloとも呼ばれる。9度ハロはピラミダルハロの中で最も小さく、最も現れやすい(年に数回)とされるハロである。太陽からの距離が近くまぶしいため撮影時には気付かれず、写真を確認したときに気付かれることもしばしば。


 9度が最も現れやすい理由は、

ピラミダルハロの中でプリズム角が最小→光量の損失・分光が最小

半径が最小→最小の範囲に光が投射されるため単位面積あたりの光点の密度が高い

 ①②より9度ハロはピラミダルハロで最も明るいハロとなっている

18-24度のような密集地帯ではなく、他のピラミダルハロと距離を取った所に現れるため見つけやすい

ピラミダルハロが最小なので、ハロを形成するのに必要なピラミダル氷晶を含む雲の面積も最小で良い

(レンズフレアやオーレオールを9度ハロと間違われることが多く、これも報告数が多い理由の一つになってしまっている。疑わしい現象に出会った際は太陽を何かで隠して撮影しましょう。)

 

 9度ハロが見えるとき22度ハロが通常より幅広くなっていることが多く、それは23度や24度ハロ等の併存及び融合によるものと考えられる。逆にただ幅広い22度ハロが見えるときは、氷晶が小さいことによる散乱も考えられるため、9度ハロの存在の保証にはならない。

 9度ハロに9度プレートアークの成分が混じると上下が明るくなる。9度カラムアークの成分が混じると左右が明るくなる。


 ※光路を考えると9度ハロを作る氷晶は、18度ハロ以外の全てのピラミダルハロも作り得ます。つまり見えにくさを無視したら理論上は18度ハロ以外のハロは9度ハロと出現頻度が同じと言えます。是非とも9度ハロが見えたときは他の度数のハロを探してみてください!


観測例

AKM eV より

9°-Ring


18度ハロ

 Rankin's haloとも呼ばれる。ピラミダルハロの中で2番目に小さいが、太陽から距離があり、一番近い20度ハロから視角2度の隙間があるためそれなりに見つけやすい。

 18度プレートアークの成分があると左右が明るくなる。


観測例

AKM eV より

18°-Ring


20度ハロ

 Burney's haloとも呼ばれる。ピラミダルハロの中で3番目に小さいが、太陽から距離があり、一番近い18度ハロ、22度ハロから視角2度の隙間があるためそれなりに見つけやすい。

 20度プレートアークの成分があると上下(太陽高度が約数度以上からは下部のみ)が明るくなる。

 20度カラムアークの成分があると左右が明るくなる。


観測例

AKM eV より

20°-Ring


23度ハロ

 Barkow's haloとも呼ばれる。22度、23度、24度ハロはそれぞれ視角1度しか離れていないため、肉眼では幅広い22度ハロとして認識されることが多い。

 23度プレートアークは他のプレートアークと異なり基本的に23度ハロと接さない。そのため23度ハロはプレートアーク由来で一部分が明るくなることは無いと考えて良い。


観測例

AKM eV より

23°-Ring


24度ハロ

 Dutheil's haloとも呼ばれる。22度、23度、24度ハロはそれぞれ視角1度しか離れていないため、肉眼では幅広い22度ハロとして認識されることが多い。

 24度プレートアークの成分があると斜め上下の4ヶ所が明るくなる。


観測例

AKM eV より

24°-Ring


35度ハロ

 Feuillée's haloとも呼ばれる。ピラミダルハロの中で(46度ハロを抜かすと)最大のものである。色が薄く、半径が大きく他のピラミダルハロから離れていることから気付かれないことが多い。

 35度プレートアークがあるときは、斜め上下4ヶ所(太陽高度数度以上は斜め下部2ヶ所)が明るくなる。


観測例

AKM eV より

35°-Ring