多重散乱のハロ

 光が氷晶に一度入り、ある現象を作り出す。その現象の光が更に他の氷晶へ入り別の現象を作り出すことが極稀にある。それらはMultiple scattering halos/Secondary halosと呼ばれ、多重散乱/二次ハロと仮称した。

 一度散乱すると大きく光量は減るため、相当に鮮やかで眩しい現象が起きた際にのみ発生する。少なくとも写真として残っているMSハロは2回までの散乱によるものだけである。


44度幻日


別名 二次幻日

英名 44-degree parhelion,secondary parhelion

氷晶 六角板状

配向 プレート

光路 ①3→5/3→7②3→5/3→7


 幻日が作る幻日のことであり、視半径22度+22度で44度のところに現れる。そのため46度ハロの少し内側が出現場所となる。

 また幻日の光路を鑑みるに、基本的に太陽高度が地平線に近いときに現れやすい。


 ※複散乱によるハロの中では観測例が多く感じられ、現れやすいのではないでしょうか?(激レアであることに変わりはありませんが)

 また、44度幻日を外暈に対応した幻日と誤解されることがあります。しかし配向、光路を考えると外暈に対応する幻日は「環天頂アーク」「環水平アーク」です。


観測例

Atmospheric opticsより

Extremely rare 44-degree parhelia


二次上部タンジェントアーク(幻日から)

二次幻日(上部タンジェントアークから)


別名 

英名 upper tangent arc of parhelion/parhelion of upper tangent arc

氷晶 六角柱状と六角板状

配向 カラムとプレート

光路 ①プレート3→5/7②カラム3→7とその逆


 幻日が作る上部タンジェントアーク、上部タンジェントアークが作る幻日。

 観測された記録は以下のもののみで、「ウェゲナーアーク」と「幻日の鉛直方向の延長線」の交点が少し明るくなっているが、それがこの現象である。


観測例

The Halo Vaultより

Complex Halo Display, Borlänge, Sweden 17.12.2018


二次22度ハロ(幻日から)


別名 二次22度ハロ

英名 

氷晶 六角板状と六角柱状

配向 プレートとランダム

光路 ①プレート3→5/7②ランダム3→5/7


 幻日が作る22度ハロのことで、写真による観測記録は無い。真偽不明である。


観測例

日本気象学会機関誌「天気」35巻326頁

根室で観測されたハロー現象

著者:浅野正二 観測:松永貢


二次幻日環(上部タンジェントアークから)


別名 

英名 parhelic circle of upper tangent arc

氷晶 六角柱状、六角板状

配向 カラムとプレート等

光路 ①カラム3→5②様々


 上部タンジェントアークが光源となり幻日環が生まれる現象。環天頂アーク・カーンアークと形は似ているが、色は付いておらず位置も違う。

観測例

二次上部タンジェントアーク(上部タンジェントアークから)


別名 44度水平アーク、ヴォーコーネンアーク

英名 Vauhkonen arc,upper tangent arc of upper tangent arc

氷晶 六角柱状と六角板状

配向 カラム

光路 ①プレート3→7②カラム3→7


 上部タンジェントアークが作る上部タンジェントアークで、46度ハロより2度ほど下にうっすらと見える。観測例ではほぼ水平なタンジェントアークとして現れ、二次22度(44度)水平アークとも呼ばれている。

 ※周囲で出現し得る現象は上から、環天頂アーク上部ラテラルアーク46度ローウィッツアーク46度ハロ二次上部タンジェントアークと大変混みあいます。

観測例

二次環天頂アーク(上部太陽柱から)

二次環天底アーク(下部太陽柱から)


別名 

英名 Henriksson's arc

氷晶 六角板状

配向 プレート

光路 


 太陽柱が光源となり現れる環天頂アーク。正確には、太陽柱は縦長であるため、縦長の光源によって連続的に作られた環天頂アークの重ね合わせ。よって太陽高度の変化によって、この現象の明るさは変わる(0度が一番明るい)が、位置が変化することはない。そのため太陽高度が15-25度あたりでは「位置が固定されている二次環天頂アーク」と「上昇した通常の環天頂アーク」の乖離が良く観測できる。

 また、この現象の光路を調べると、上部太陽柱からの環天頂アーク、下部太陽柱からの環天底アークが重なりあって出来ているということが判明した。


観測例

Koko taivaan haloilmiö 18.10.2013

Secondary CZA from Sun Pillar 1.3.2020


その他の複散乱によるハロ


 他の複散乱によるハロは以下のものがある。


①二次環天頂アーク(幻日、幻日環、120幻日から)

②二次幻日環(環天頂アークから)

 一次散乱のみでシミュレーションされたカーンアークは2・6・10時方向(天頂を中心、太陽方向を0時)に少しくびれがあった。しかし2020/2/14内モンゴルにて実際に観測されたカーンアークはそのようなくびれが無く、計算と観測が乖離してしまっていた。

 二次散乱を含むシミュレーションを行ったところ①・②の光路が発見され、カーンアーク・①・②が互いに補助し合うことで、より滑らかで明るい「カーンアーク」となると現在考えられる。


③66度幻日(三次幻日か?)

 Sastatoon displayの記録としてスケッチされている。真偽不明。


 ※我々が思っているより遥かに多くの種類のMSハロが、①のように、既に見つかっている現象を補助するようなかたちで存在し、ひっそりと素晴らしいディスプレイに貢献しているのかもしれませんね!


 ※多重散乱によるハロはまだまだ未解明の部分が多く、不適切な説明を書いてしまっているかもしれません。もし何かあればご指摘を、ここに載っていないMSハロの情報をご存知の方がいらっしゃいしたらご連絡をください!